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about Saihoji

事前申込制に込めた想い

1928年、西芳寺は庭園の一般公開を開始しました。
庭園一面を覆う120余種の苔の美しさから「苔寺」の愛称で親しまれ、戦後には大佛次郎の小説『帰郷』の舞台となります。1955年頃に巻き起こった庭園ブームを契機として、世界各国から多くの方々がいらっしゃるようになり、当時の参拝者数は京都で4番目の多さとなりました。

参拝される方々が増えるにつれ、渋滞による交通のマヒや騒音、ゴミの増加等、公害問題が生じたことから、1970年頃より各行政当局や近隣住民の皆様と対策を講じましたが、抜本的な解決には至りませんでした。西芳寺としても、観光ブームに乗じて闇雲に参拝者を増やすのでなく、寺院本来の宗教的雰囲気を保ちながら心静かにお参りいただきたいという願いがあり、1977年より事前申し込み(往復はがき)による少数参拝制の実施に踏み切ったのです。

西芳寺

一般公開を停止することに対しては、当初厳しいご意見をいただきました。また、檀家を持たない西芳寺にとって、参拝者の皆様からいただく冥加料はお寺の維持・整備のための貴重な財源であり、お寺の保全という面でも苦渋の決断でありました。それでも、お寺とは人間の生きる上での心のよりどころとならねばならないという想いから、短期的な収益ではなく、寺本来の在り方を追求する方針をとったのです。

少数参拝制へ移行後は、参拝される方お一人お一人に丁寧なご案内ができるようになり、訪れた方からも喜びのお声をいただいています。庭園にかかる負荷も少なくなり、苔や自然の保全にもつながりました。一方で、いつしか事前申込制が希少価値を生み、「一生に一度行きたい、苔の美しいお寺」というイメージが定着してしまいました。

一般公開の停止から50年。西芳寺を取り巻く環境は大きく変わりました。これまでも時代の変化にあわせて参拝内容を工夫して参りましたが、2031年の開山1300年という大きな節目を控えた今、あらためてお寺のあるべき姿を見つめ直す時機がきています。「今を生きる人々の心のよりどころとなる」という想いを継承し、深めていくために何をすれば良いか。その答えのひとつとして、2023年9月にスタートするのが会員制度「Saihokai」です。少ない人数でゆっくりとお参りいただける少数参拝制を継続しながら、西芳寺を愛してくださる方々と、より近く、より深くご縁を結んでいける場を叶えて参ります。
苔の美しさだけではなく、五季折々の自然を五感で楽しみ、先人たちによって積み重ねられてきた歴史に想いを馳せてもらいたい。一生に一度ではなく、何度でも足を運んでほしい。「行きつけのお寺」として、自分を見つめ直したり、大きな決断をしたりするための場として皆様の心に存在し続けたい。それが西芳寺の願いです。