2024.1.25
縁の交差点
クリエイターズインタビュー
渡辺 潤平(コピーライター)
株式会社渡辺潤平社 代表取締役。
コピーライター/クリエイティブディレクター。
1977年千葉県船橋市生まれ。早稲田大学卒業後、2000年に博報堂入社。2007年に渡辺潤平社設立。広告キャンペーンの企画立案のみならず、コーポレートスローガンの策定や商品・企業のネーミング、作詞など、言葉を中心としたコミュニケーションを幅広く手掛ける。
https://www.watanabejunpei.jp
ー西芳寺の新しいコンセプト「調律と閃きの庭」ができた背景についてお教えください。
縁あって西芳寺さんのキャッチコピーを担当することになった際、最初にやるべきだと感じたのは、「苔寺」という言葉によって矮小化されていた西芳寺の潜在価値を解き放つ、ということでした。
ー確かに、「苔寺」という言葉では表現しきれない「美しさ」や「荘厳さ」を感じますよね。
本堂に一歩足を踏み入れたときの感覚。庭の空気と自分の身体が同調した瞬間の没入感と清々しさ。苔の美しさを眺めるだけにはとどまらない、五感が研ぎ澄まされる感覚を、一人でも多くの参拝者に抱いていただきたいと考え、思い切りよく言葉を削り出しました。
ー「調律と閃きの庭」は、まさにこれから西芳寺を訪れる方にも伝わるコンセプトだなと感じました。渡辺さんが、初めて来院された時、西芳寺にどのような印象を持ちましたか。
訪れる前は、もっと重厚というか、鬱蒼とした空間を想像していました。でも、初めて西芳寺を訪れた際に、「凛と心地良い空気」に面食らったのを今でも覚えています。以後何度訪れても、その時の印象が変わることはありませんね。
ー西芳寺で過ごされる中で、特に心に残った瞬間や出会いがあれば教えてください。
梅雨の頃に、家族でお邪魔した折、ひと通り境内を拝観した後で、5歳の長女が「お庭をもう一度見てくる」と言って、一人でお庭へ飛び出していきました。そして、そのままたった一人でしばらくお庭を歩いていました。まだ幼い感性すら惹きつけてしまう西芳寺の凄みを、娘の姿を通して見せつけられた気持ちになりました。
ーお子様もお庭をみて、自然の雄大さや美しさに惹きつけられたのかもしれませんね。渡辺さんにとって「心調う場」とは、どんなところですか。
八ヶ岳の広葉樹の森、バスケの体育館、愛車の運転席、麻布十番のサウナ、あとは自宅のトイレです。「心調う場」は一箇所ではなく、日常生活の至るところに点在しています。